{うつ}と{軽うつ}
ここでいう{うつ}とは{うつ病}のことをさしている。うつ病には診断基準が設けられ、その基準に当てはまることが重要である。ところで{軽うつ}とはうつ病ではないが、うつ状態を示し、しかも生活機能に支障を来しているものである。ICD10では{他のうつ病エピソード}や{気分変調症}に該当する。
なお{軽うつ}という言葉は{軽症うつ病}という意味でも使われるので注意が必要である。うつ病で軽症・中等症・重症と分けるときに症状の数を診断基準で重視しているが、むしろ生活機能の障害のレベルで判断した方がわかりやすい。中等症とは仕事や家事において明らかな障害が生じ破綻を来しているものであり、重症は基本的ADLにおいても一部、障害を呈しているものである。軽症は仕事や家事において多少の障害や困難を認めるが、破綻までは来していないものである{なんとかやっているというレベルである}。
それでは{うつ}と{軽うつ}を区別するのは何であろう。症状の数を診断基準ではやはり重視しているが、それはいかにも操作的といわざるを得ない。物事の本質は何かと言うことが大切である。私は症状の自己コントロール性が重要とみている。うつ病の人はいくら努力しても、うつの症状は晴れない。それに反し{軽うつ}の人は気分転換や気持ちの持ち方で気分が良くなったりする。勿論うつ病の人も良くなってくればそのようなことが可能になってくるものだが。
この自己コントロール性については{躁}と{軽躁}の場合にも当てはまる。{躁病}の人は自己コントロールが働かず、ほとんどの例で入院を余儀なくされる。軽躁の人は自己コントロールがある程度保てれ、入院することはほとんど無い。ただしトラブルを起こし、人に迷惑をかけることが多い。