心的外傷後ストレス障害{PTSD}の誤解
「すごくショックな事があって、心に傷を受けて、心身ともにバランスを崩している。眠れないし、気分も落ち着かないし。これってPTSD?」といって病院に来られる方がおられる。しかし、ほとんどの人はそうではない。そして次のような感じで説明する。
1 PTSDは命に関わるような体験をきっかけとして生ずるもので、多くは災害や大きな事故や犯罪に巻き込まれて起こり、1ヶ月以上経過してもなお症状が続いているものである。
2 主な症状としてはきっかけとなった体験が夢の中、あるいは白日夢になって繰り返し現れ、2次的なつらい体験として追体験され、そのために日常生活に少なからずの支障を生じているものである。その状況がおきた場所などを回避することが多い。
従って心に傷を受けたからと言ってPTSDというわけではない。一般的な、命に関わらないようなストレスから生じる反応で、不安や抑うつや自律神経症状などがみられる場合は適応障害と診断されることが多い。なお抑うつの程度が強い場合はうつ病である場合があるし、不安症状が3ヶ月以上続く場合は不安障害である可能性があるので要注意である。
ところで誰でも心の傷の1つや2つは持っている。だからといって日常生活に支障を来しているわけではない。その場合は障害あるいは病気とは呼ばない。