寝たきりになる前に、楽しみたいもん
患者さんと話をしていると、ハッとする瞬間がある。
今まで「眠れない、眠れない」と言って「薬を強くしてくれ」だの「薬を増やしてくれ」だの、あげくは薬を余分に飲んだりしていたような人がこんなことを急に言い出したのである。「寝る前の薬は要らない。寝たきりになる前に、楽しみたいもん。眠れなくても、仕事をしてるわけじゃないから構わない」。どうした風の吹き回しなのか?
誰かに説得されたのか、それとも誰かに脅されたのか{私でないことは確かである}あるいは薬を余分に飲みすぎて寝たきり状態になってしまい、後悔し、ハッと気が付いたのか。
ずーっとその気持ちを忘れないでもらいものであるが、えてして逆戻りする可能性もあるので早々うかうかはできないが。依存症は本人が何とかしようと思わないとなかなか脱却できない。自然の成り行きでいい方向に向かったのであろう。
私もその言葉を聞いて、開業医生活も14年が過ぎ、あっという間に年を重ねてしまったが、もう少し人生を楽しまなくちゃあなとつくづくと思ったのである。
湘南こころのクリニック