今話題の「鬼滅の刃」を見に行った。平日の夕方前に出かけたため、劇場内はさほど混んでいなかった。

鬼によって家族を失った炭次郎{主人公}が鬼殺隊という鬼退治集団に入り、先輩{「柱」}と組み、鬼の首をとるストーリーだ。

最後のシーンで「柱」が吐露する言葉についつい涙を流してしまう。

そのシーンをもう一度確かめたくて、後日、書店で発見した「鬼滅の刃」ノベライズ版を購入した。

上弦の鬼から「{永遠の命を持てる}鬼にならないか。お前は選ばれし強き者なのだ」と誘われる場面である。「柱」はこんなことを言って突っぱねる。

     老いることも死ぬことも、人間というはかない生き物の美しさだ。老いるからこそ、死ぬからこそ、たまらなく愛おしく貴いのだ。

そして「柱」は炭次郎に己の想いを託す。

     己の弱さや不甲斐なさにどれだけ打ちのめされようと、心を燃やせ。歯を喰いしばって前を向け、君が足を止めてうずくまっても時間の流れは止まってくれない。共に寄り添って悲しんではくれない。俺がここで死ぬことは気にするな。柱ならば後輩の楯となるのは当然だ。柱ならば誰であっても同じことをする。若い芽は摘ませない。

そして、若い時に亡くなった母にこんなことをつぶやいて旅立つ。

      母上、俺はちゃんとやれただろうか。やるべきこと果たすべきことを全うできましたか?

      {胸の中で母は、息子を見つめると、涼やかな目元をゆるめ、ー ー ー 立派にできましたよ。

      そう言って微笑んでくれた。}

湘南こころのクリニック